オカメインコの配色パターンが変化して生じた変異種です。ノーマル種のグレー部分にクリーム色が混ざったり,反対に黄色い顔にグレーが混じったりもします。日本においてパイド種は,ルチノーに次いで馴染み深い変異種ではないでしょうか。大きなショップなどでは,比較的よく見かける品種です。
パイドは,色素自体の変化ではなく,配色パターンが変化して生じた変異種です。その配色パターンはランダムですが,親と子の間ではかなり正確に遺伝するようです。パイドは,常染色体劣性遺伝であることが知られています。
配色パターンはランダムではありますが,翼や肩の部分にはグレーが残ることが多いようです。しかし,最も極端な例では,体色のほとんど全てがクリーム色に変化し,爪の1本だけがグレーであったり,あるいはくちばしにグレーの筋が入っているだけ,というようなこともあります。このように,クリーム色の部分が極端に広くなっている個体は「リバース」と呼ばれています。また外見上,頭部にはグレーが混じっていないものが好まれており,その様な個体は「クリアー・フェイス」と呼ぶこともあるようです。
パイド種は配色パターンがランダムであるため,外見から雌雄判別をすることは非常に困難です。しかし,オスであればさえずりをしながらメスに求愛しますし,メスであれば交尾を受け入れる体勢をとるなど,特有の仕草によって雌雄を判別することが可能です。
【コラム 〜 パイドは劣性遺伝?】
最近,「パイドは本当に劣性遺伝なのか」という議論があります。結論から申し上げますと,不完全な劣性遺伝だと考えるのが妥当ではないかと考えています。
劣性遺伝の場合,優性遺伝子によってその効果は完全に消されてしまうため,ヘテロが外見上から特定できないのが特徴です。パイドでいえば,スプリットパイドなのかノーマルなのかは,外見上からは判断できないということになります。
ところが,JCC会長によれば,パイド遺伝子がヘテロの個体には頭部に黄色い羽(ホワイトフェイスでは白い羽)が幾分混じっており,外見上から判断可能だとの報告があります。
生物学の著書を読んでみますと,従来は劣性遺伝子だと思われていたものが,その後の注意深い観察によって必ずしもそうではないことが判明することが少なくないそうです。オカメインコのパイドも,まさにこのケースにあたるといって良いでしょう。
パイドは完全な劣性遺伝ではなさそうですが,かといって優性遺伝だと表現するのは無理がありそうです。優性遺伝なら,スプリットパイドであっても(パイド遺伝子の対立遺伝子たる)ノーマル遺伝子の特徴をもっとはっきりと打ち消し,パイドの特徴を示さなければならないからです。
これらのことから総合的に判断すると,パイドは不完全な劣性遺伝であると考えるのがよいと思われます。したがって,これまでと同じようにスプリットパイドという表現を用いてもそれほど間違いであるとはいえないでしょう。ただし,スプリットパイドと表現されてはいるものの,それは外見から判断が可能であるという点に注意しておいてください。